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第89話:UN3077・UN3082の判断基準とは?混合物と環境有害物質の国連番号を実務で見分ける方法

マンガで学ぶ危険物輸送と危険品、貿易の基礎知識:第89話 マンガで学ぶ危険物輸送と危険品、貿易の基礎知識:第89話

UN3077とUN3082は、環境に有害な物質または混合物を輸送するときに使われるクラス9の包括的な国連番号です。固体はUN3077、液体はUN3082が基本ですが、単に「環境に悪そう」「SDSに環境有害と書いてある」という理由だけで選ぶ番号ではありません。

正しい判断では、まず他の危険物クラスや固有の国連番号が優先されないかを確認します。そのうえで輸送上の環境有害性基準、物理状態、混合物の組成、輸送モード、少量包装の特別規定を順に確認します。本記事では、初学者が迷いやすいポイントを、実務で使える判定順序に沿って整理します。

UN3077・UN3082はどのような国連番号か

UN3077は「環境有害物質(固体)、他に品名が明示されていないもの」、UN3082は「環境有害物質(液体)、他に品名が明示されていないもの」に用いる包括名です。どちらもクラス9で、一般には容器等級IIIとして扱われます。「他に品名が明示されていないもの」とは、危険物リストにその製品を一意に表す固有名がない場合に使う受け皿という意味です。

重要なのは、消防法上の危険物、労働安全衛生上の有害物、PRTR対象物質、GHSラベルの環境絵表示、海洋汚染物質、輸送危険物が同じ制度ではないことです。例えば、国内の消防法では第三石油類でも、引火点などの輸送分類基準を満たさず、国際輸送ではクラス3にならない製品があります。反対に、消防法の対象外でも、海上・航空輸送では環境有害物質としてクラス9になる場合があります。

UN3077とUN3082の区別は、輸送時の物理状態で行います。粉体、粒状、ペレット、固形樹脂、固化物はUN3077を検討します。液体塗料、水系処理剤、乳剤、溶液、液状接着剤などはUN3082を検討します。粘度が高い、容器から流れにくい、ペースト状であるという理由だけで固体にしてはいけません。規則上の物理状態と製品実態を確認する必要があります。

また、UN3077・UN3082に該当しても、一定の小容量包装には特別規定があります。代表的には、単一容器または内装容器1個当たり、液体5 L以下、固体5 kg以下で、所定の一般包装要件を満たす場合です。ただし、これは「製品が非危険物になる」という意味ではありません。適用する輸送モード、国別差異、運送人の受託条件によって確認事項が残るため、出荷前にフォワーダーや運送人へ適用可否を確認します。

最初に確認するのは環境有害性ではなく他クラスと固有名

実務で最も重要な原則は、UN3077・UN3082を最初の候補にしないことです。最初に、製品が引火性液体、毒物、腐食性物質、酸化性物質、自己反応性物質など、クラス1から8の基準に該当しないかを確認します。環境有害性があっても、より具体的で優先される危険性があれば、そのクラスの国連番号を選びます。

例えば、環境有害性を持つ溶剤系混合物でも、引火点がクラス3の基準を満たすなら、UN3082ではなく引火性液体の固有名または適切な包括名を検討します。腐食性と環境有害性を持つ液体なら、腐食性物質の国連番号が候補です。UN3082は「環境有害性だけが輸送上の分類根拠として残る液体」に使うと考えると、判断の順番を誤りにくくなります。

次に、危険物リストに固有の国連番号または、より製品特性に合う品名がないかを確認します。製品の商品名、一般名、主成分名だけで検索すると漏れが生じます。化学名、同義語、用途、形態、主要危険性まで広げて確認します。該当する固有名があるのにUN3077・UN3082へ逃がすのは誤りです。

SDS第14項は重要な入口ですが、結論を無条件に転記する資料ではありません。古いSDS、国内用途だけを想定したSDS、輸送モード別情報が省略されたSDS、混合物の組成変更が反映されていないSDSもあります。最新版か、製品型式と一致するか、組成と物理状態が現物と一致するか、海上・航空の双方が記載されているかを確認します。不明な場合は、供給者へ分類根拠を照会し、必要に応じて社内の化学品規制担当と危険物輸送担当が共同で判定します。

混合物の環境有害性をどう判定するか

混合物は、含有成分のうち一つが水生環境有害性に分類されているだけで、自動的にUN3077またはUN3082になるわけではありません。まず混合物そのものの試験データが利用できるかを確認します。利用できない場合は、類似混合物からの類推や、各成分の水生環境有害性区分と含有率を使う加算法など、採用するGHS分類ルールに従って混合物全体を判定します。

ここで間違いやすいのが、SDS第2項のGHS分類と輸送分類を同一視することです。GHSは危険有害性情報を伝える仕組みであり、国際輸送規則は輸送中の危険性に対する規制です。両者は密接に関係しますが、対象区分、採用版、濃度限界、国や輸送モードの実装に差があります。GHSの環境絵表示があるから即UN3082、絵表示がないから非該当、という判断はできません。

実務では、成分ごとに化学名、CAS番号、含有率または濃度範囲、水生環境有害性の短期・長期区分、M係数の有無、根拠資料の発行日を一覧化します。濃度範囲しか開示されない場合は、原則として分類結果が安全側になる濃度を用います。営業秘密を理由に必要情報が得られない場合は、供給者に製品全体の輸送分類結果と根拠を文書で回答してもらいます。

NITE-Gmiccsは混合物のGHS分類を補助する有用なツールです。ただし、入力した組成情報や単一物質データが正しくなければ結果も正しくなりません。また、出力結果をそのまま国連番号へ変換する機能として使うべきではありません。GHS分類の結果を基礎資料とし、最新の国連危険物輸送勧告、IMDGコード、ICAO技術指針またはIATA危険物規則、国内告示と照合して、最終的な輸送分類を確定します。

UN3077・UN3082で間違えやすい実例

実例1:水系防錆剤に環境有害な防腐成分が含まれる

水系製品は引火性が低いため、通常品と思われやすい製品です。しかし、防腐剤や殺生物成分が少量含まれ、それらの水生環境有害性が強い場合、混合物全体が環境有害性の分類基準を満たすことがあります。製品が液体で、他の危険物クラスや固有名が優先されず、輸送上の環境有害性基準を満たすならUN3082が候補です。

ただし、「防腐剤が入っている」という情報だけでは確定できません。成分の区分、濃度、M係数、製品全体の分類を確認します。少量包装の特別規定を使える場合でも、容器の密閉性、通常の輸送条件で内容物が漏れないこと、外装の適合性を確認します。

実例2:金属化合物を含む粉体

金属化合物を含む粉末や顔料は、環境有害性が高い成分を含む場合があります。固体で、他のクラスや固有名が優先されず、混合物全体が輸送上の環境有害性基準を満たすならUN3077が候補です。一方、特定の金属化合物に固有の国連番号がある場合や、毒性など別クラスが優先される場合はUN3077を使いません。

実例3:引火性のある環境有害な塗料

環境有害性があっても、引火性液体の分類基準を満たす塗料をUN3082にするのは誤りになり得ます。引火点、初留点、粘度、成分、適切な塗料のエントリーを確認し、クラス3として分類します。環境有害性は、必要に応じて海洋汚染物質表示などへ反映します。

実例4:SDSの第12項は有害、第14項は非該当

第12項に水生生物への有害性が記載されていても、輸送基準の閾値を満たさない、混合物全体では分類されない、または少量包装の扱いを説明している可能性があります。逆に第14項が古いままの可能性もあります。この不一致を担当者の推測で処理せず、供給者へ分類根拠と改訂要否を照会します。

実務で迷わないための判定フローと管理方法

実務では、次の順序を社内標準にします。第一に、製品の最新版SDS、組成、物理状態、引火点、pH、毒性、用途を集めます。第二に、クラス1から8の該当性と、固有の国連番号または適切な包括名を確認します。第三に、残る主要危険性が環境有害性である場合、混合物全体の水生環境有害性を判定します。第四に、固体ならUN3077、液体ならUN3082を候補とします。

第五に、輸送モードを確定します。海上、航空、国際陸上では、同じ国連番号でも適用する規則、特別規定、表示、書類、受託条件が異なる場合があります。海上輸送では2026年1月1日からIMDGコード2024年版、改正42-24が強制適用されています。航空輸送は使用する最新版のICAO技術指針とIATA危険物規則、国別差異、航空会社差異を確認します。

第六に、容器ごとの正味量を確認し、液体5 L以下または固体5 kg以下の特別規定を適用するか決めます。判断単位は出荷全体の合計量やパレット重量ではなく、原則として単一容器または内装容器ごとの正味量です。「段ボール箱全体で5 kg以下」「パレット単位で5 L以下」と読み替えないことが重要です。

第七に、正式輸送品名へ技術名を追記すべきかを確認します。N.O.S.の包括名を使用する場合、危険性へ主に寄与する成分の化学名を括弧内へ記載する扱いがあります。商品名や社内コードだけで済ませません。技術名の選び方、記載数、守秘情報の扱いは、適用規則と運送人の指示に従います。

最後に、判定根拠を一枚の「輸送分類判定票」に残します。製品名、型式、SDS版、組成版、物理状態、優先クラス確認、選定した国連番号、正式輸送品名、技術名、容器等級、海洋汚染物質、少量包装特例、輸送モード、判定者、確認者、改訂日を記録します。製品変更、原料変更、濃度変更、SDS改訂、法令改正時には再判定します。

結論として、UN3077・UN3082は「迷ったときの無難な番号」ではありません。先に他の危険性と固有名を落とし込み、混合物全体の環境有害性が残った場合に使う包括名です。SDS第14項だけに依存せず、組成、GHS分類根拠、輸送規則をつないで判定することが、過剰申告と未申告の両方を防ぐ最も実務的な方法です。

実務チェックリスト

参照・参考資料

マンガで学ぶ危険物輸送と危険品、貿易の基礎知識

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