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第92話:危険物申告書DGDの見方と作り方|デクラ・赤紙の意味、提出先、航空・海上の必要書類

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危険物申告書は、危険物の内容と輸送条件を運送人へ正式に伝え、荷送人が規則への適合を宣言する重要書類です。単なる通関添付資料ではありません。事故時の対応、積載・隔離、航空会社や船会社の受託判断に使われます。

実務では「DGD」「デクラ」「赤紙」など複数の呼び方が使われます。ただし、航空と海上では様式、記載項目、提出方法が異なります。本記事では、呼称を整理したうえで、作成主体、提出時期、読み方、間違いやすい点、メーカー側が準備すべき書類を実務順に解説します。

DGD・デクラ・赤紙は同じものか

DGDは一般に「Dangerous Goods Declaration」の略として使われます。航空では、正式には「Shipper's Declaration for Dangerous Goods」と呼ばれる荷送人の危険物申告書を指すことが多く、IATAもDGDという呼称を使用しています。日本の現場では、英語のDeclarationを短くして「デクラ」と呼ぶ習慣があります。

「デクラ」は法令上の正式名称ではなく、物流業界で広く通じる通称です。フォワーダー、航空会社、危険物梱包業者との会話では一般的ですが、初回取引や海外拠点との連絡では「航空用の荷送人危険物申告書」など、輸送モードと書類名を明記した方が確実です。「デクラをください」だけでは、海上書類か航空書類か、ドラフトか署名済み原本かが曖昧になります。

海上輸送の「赤紙」は、日本で使用される危険物明細書またはコンテナ危険物明細書の通称です。かつて赤色系の用紙を使う運用が定着したことから、この呼び名が残っています。国土交通省のデジタル化資料でも、危険物明細書を「通称、赤紙」と整理しています。

したがって、赤紙は海上危険物書類を指す日本固有の実務用語であり、航空DGDと完全に同じ書類ではありません。目的は近いものの、適用規則、様式、必要記載、署名、提出経路が異なります。航空用をそのまま海上へ流用したり、海上の赤紙を航空会社へ提出したりしてはいけません。

なお、海上には「危険物・有害物事前連絡表」、通称「白紙」もあります。赤紙は船舶所有者または船長へ危険物の明細と適合性を伝える書類です。白紙は港湾荷役の安全確保のため、種類、性状、数量、荷姿、取扱上の注意を関係者へ知らせる書類です。名称が似ていますが、目的と提出先が違います。

危険物申告書は貿易書類の中で何を担うか

危険物申告書は、売買代金を請求するインボイスでも、貨物の梱包内訳を示すパッキングリストでもありません。B/LやAWBのような運送状でもなく、輸出申告書そのものでもありません。危険物の分類、包装、表示、数量、輸送制限が適切であることを荷送人が申告する「安全輸送のための規制書類」です。

インボイスは、品名、価格、取引条件、売手・買手などを通関や決済へ伝えます。パッキングリストは、箱数、重量、寸法、梱包内容を伝えます。B/LまたはAWBは、運送契約や貨物受取りに関する情報を示します。DGDや赤紙は、それらの貨物と危険物情報を結び付けます。

書類主な目的危険物輸送での確認点
インボイス価格・品名・取引条件商品名、数量、荷送人・荷受人の整合
パッキングリスト梱包内訳・重量・寸法個数、外装、正味量・総重量の整合
B/L・AWB運送情報・貨物受領荷送人、荷受人、便・航路、危険物情報との紐付け
DGD・危険物明細書危険物情報と適合宣言国連番号、正式輸送品名、クラス、容器等級、数量、包装
SDS化学品の危険有害性情報分類の基礎資料。ただし申告書の代用ではない

危険物申告書だけを正しく作っても、現物や他書類と不一致なら受託されません。DGDに4缶と書き、パッキングリストは5缶、現物は6缶という状態は認められません。国連番号、正式輸送品名、数量、包装、荷送人、荷受人、AWB・B/L情報を案件単位で突き合わせます。

SDS第14項は作成の入口ですが、SDSを添付すればDGDが不要になるわけではありません。SDSは一般的な製品情報です。DGDは今回の出荷について、実際の包装個数、正味量、輸送制限、包装基準、署名を示します。最新版SDSと現物の組成・状態が一致していることを確認してから作成します。

航空危険物申告書の見方と提出

航空DGDは、荷送人が危険物貨物をIATA危険物規則などに従って分類、包装、表示、申告したことを証明する書類です。通常はフォワーダーまたは航空会社の危険物受付へ、貨物搬入前または搬入時までに提出します。締切や原本部数、電子提出の可否は、航空会社、上屋、フォワーダーによって異なるため、予約時に確定します。

2026年はIATA危険物規則第67版が1月1日から有効です。航空会社差異、国別差異、出発地・経由地・到着地の要件も確認します。最新版様式を使い、過年度のコピーを上書きしないことが基本です。

上段には荷送人、荷受人、AWB番号、ページ番号、航空機の制限、出発地・目的地、放射性・非放射性の区分などがあります。中央の「Nature and Quantity of Dangerous Goods」が核心です。通常、国連番号またはID番号、正式輸送品名、クラスまたは区分、副次危険性、容器等級、包装個数と種類、容器当たりの数量、包装基準、必要な特別規定・承認を確認します。

航空機の制限では、旅客機搭載可能か貨物機専用かを明確にします。包装基準番号は、単なる社内包装仕様番号ではありません。適用するIATA規則上のPacking Instructionを記載します。容器当たりの正味量が上限以下か、内装容器と外装の組合せが適合するかを確認します。

下段には追加取扱情報、緊急連絡先、署名者の氏名、日付、署名などを記載します。署名者は、記載内容と包装状態を確認でき、必要な危険物教育を受けた者でなければなりません。外部の危険物梱包業者が作成を支援しても、荷送人側が製品情報を正確に提供し、責任関係を明確にします。

IATAの2026年非放射性危険物チェックリストでは、電子DGDでない場合、英語かつIATA形式の2部について確認する構成です。ただし、実際の提出部数や追加原本は運送人条件で増えることがあります。古い経験から「必ず2部」「必ず3部」と固定せず、予約航空会社とフォワーダーの書面指示を採用します。

海上の危険物明細書・赤紙の見方と提出

海上輸送では、危険物の荷送人が、危険物明細書またはコンテナ危険物明細書をあらかじめ船舶所有者または船長へ提出します。実務ではメーカーや荷主が基礎情報を提供し、海貨業者やフォワーダーが帳票を作成する場合があります。しかし、分類・数量・包装の元情報を持つ荷送人の責任まで移るわけではありません。

コンテナ輸送では、コンテナ番号、荷送人、荷受人、作成・提出日、国連番号、正式輸送品名、等級、隔離区分、副次危険性、容器等級、個数、質量または容積などを確認します。船名、航海番号、積港、揚港、シール番号、海洋汚染物質、引火点、EmS、緊急連絡先など、様式や船社条件に応じた情報も必要です。

危険物の基本記述は順序が重要です。国連番号、正式輸送品名、クラスまたは区分、副次危険性、容器等級などを適用規則の順序で記載します。N.O.S.品名で技術名が必要な場合、商品名だけでは不足します。危険性へ主に寄与する化学名を規則に従って括弧内へ記載します。

海上の赤紙は、通常の輸出通関書類とは別に、船社、船舶代理店、NVOCC、CY、倉庫などの物流経路で使用されます。提出期限は船社の危険品カット、コンテナ搬入、危険物申請や港湾手続に左右されます。貨物のCYカットだけを見ず、危険品書類の締切を予約時に確認してください。

コンテナや車両へ危険物を収納した場合は、コンテナ・車両収納証明も重要です。IMOのMultimodal Dangerous Goods Formでは、危険物申告とコンテナ・車両収納証明を一体化できる様式が示されています。収納責任者は、コンテナが清潔で適切であること、貨物が正しく積載・固縛されたことなどを確認して署名します。

赤紙に対する白紙は、港湾荷役の安全情報です。白紙には危険性、有害性、荷姿、数量、取扱注意、漏えい時の措置などを具体的に記載します。赤紙を提出したから白紙が不要になるとは限りません。港、ターミナル、倉庫、港湾労災防止協会の運用に従います。

誰が作成し、メーカーは何を提出するか

法令・規則上の基本主体は荷送人です。メーカーが荷送人になる場合、メーカー側が申告内容を確定し、適切な署名者が申告します。商社や海外販売会社が荷送人となる場合でも、メーカーはSDS、組成、物性、分類根拠、包装仕様、試験情報を正確に提供する必要があります。

フォワーダーや危険物梱包業者がDGDを代行作成することは業界で一般的です。ただし、代行は不明情報を推測してよいという意味ではありません。メーカーは製品の分類情報を提供し、梱包業者は実際の容器、個数、正味量、表示を確認し、荷送人は最終版を承認します。

メーカー側から提出する書類は貨物によって異なりますが、標準セットは次のとおりです。すべての案件で全書類が必要という意味ではありません。最初に共通資料を提出し、特殊品に必要な追加証明を確認します。

実務では、メーカーが「SDSだけ渡したので後はフォワーダー責任」と考えることが最大の問題です。SDSには今回の箱数、容器当たり数量、実包装、輸送便、荷受人は載っていません。メーカー、梱包者、荷送人、フォワーダーが、それぞれ確認した情報を一つの案件台帳で照合する必要があります。

作成時に特に間違えやすいポイント

最も多い誤りは、商品名を正式輸送品名として記載することです。危険物申告では、適用規則の危険物リストにあるProper Shipping Nameを使います。SDSの製品名、社内品番、ブランド名だけでは受託されません。N.O.S.品では必要な技術名を追加します。

次に、数量単位と包装個数の間違いがあります。容器当たりの正味量を記載すべき欄へ総重量を記載する、kgとLを取り違える、外装箱数だけを書いて内装容器数が分からない、といったミスです。DGD、パッキングリスト、現物ラベルを並べて確認します。

訂正方法も運送人へ確認します。手書き修正、修正液、上書き、差替えの可否は書類や運送人によって異なります。誤りを見つけたら、部分修正で押し切らず、原則として正しい情報で再発行し、旧版を回収・無効化します。メール添付版と紙原本の版違いにも注意します。

また、DGDを作成した後に包装や数量を変更した場合は、必ず再照合します。箱を一つ減らす、容器サイズを変える、便を旅客機から貨物機へ変える、コンテナを変更するだけでも、記載や承認に影響します。現場で変更した情報が書類担当へ戻る仕組みを設けてください。

実務で使える作成・照合フロー

第一に、予約前の段階で製品を特定します。製品名、品番、ロット、最新版SDS、組成、物理状態、数量、荷姿、輸送モード、仕向地を集めます。SDS第14項だけで確定せず、海上・航空それぞれの最新版規則で分類を確認します。

第二に、運送人へ事前照会します。国連番号、正式輸送品名、クラス、容器等級、数量、包装、便・航路を提示し、受託可否、必要書類、提出部数、電子提出可否、危険品書類カットを確認します。受託承認前に通常貨物として予約しないことが重要です。

第三に、包装と表示を完了させます。使用容器、内装・外装、吸収材、封かん、ラベル、マークを確認し、実際の個数と正味量を確定します。この確定値を使ってDGDまたは赤紙を作成します。予定値のまま署名してはいけません。

第四に、現物と書類を交差照合します。DGD、SDS、インボイス、パッキングリスト、AWB・B/L指示、現物ラベル、重量記録、コンテナ番号を一つずつ確認します。作成者と確認者を分け、読み合わせを行うと効果的です。

第五に、署名済み書類を期限までに提出します。フォワーダーへ送っただけで完了とせず、航空会社または船会社の危険物受託が完了したかを確認します。訂正依頼が出た場合は、貨物の搬入・搭載を止め、書類と現物の双方を修正します。

最後に、最終版を保管します。ドラフト、署名前、訂正版が混在しないよう、版番号または作成日時を付けます。ある会社では、案件番号ごとにSDS、判定票、DGD、インボイス、パッキングリスト、運送人承認を同じフォルダへまとめています。これは誤版使用の防止に有効です。

結論として、DGDは「フォワーダーに書いてもらう紙」ではありません。メーカーは分類根拠を示し、梱包者は現物を確定し、荷送人は規則適合を宣言し、運送人は受託判断に使います。この情報連鎖を案件単位で管理することが、差戻しと事故を最も確実に減らします。

参照・参考資料

マンガで学ぶ危険物輸送と危険品、貿易の基礎知識

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