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第53話:営業から「他社と同じUN番号にしないと売れない」と言われたらどう対応する?

マンガで学ぶ危険物輸送と危険品、貿易の基礎知識:第53話 マンガで学ぶ危険物輸送と危険品、貿易の基礎知識:第53話

同系統の競合品とUN番号が違うため、顧客説明や輸送費で不利になる。そこで営業から「他社と同じ分類にしてほしい」と求められることがあります。しかし、UN番号は販売上の都合で選ぶ商品コードではありません。対象製品の組成、濃度、物性、状態、用途、輸送時の荷姿などを、適用する危険物輸送規則の基準へ当てはめて決定する輸送情報です。

営業の懸念を無視して「規則だから駄目」とだけ返すと、対立が深まり、裏で誤った手配が進むおそれがあります。実務では、他社品との比較に必要な情報を明確にし、自社分類の根拠を再確認します。そのうえで、正しい分類を維持しながら販売条件を改善できる方法を、営業、技術、SDS担当、物流、法務で検討することが重要です。

結論:他社と同じという理由だけでUN番号を変更しない

結論は明確です。競合品が使用しているUN番号に合わせたいという営業上の要望だけでは、自社製品のUN番号を変更できません。国連危険物輸送モデル規則では、危険物を危険性の分類と組成に基づいてUN番号と正式輸送品名へ割り当てます。固有名が危険物リストにある場合はそのエントリーを確認し、該当しない場合は包括品名やN.O.S.品名を含め、分類基準と危険性の優先順位に従って判断します。

UN番号の違いは、直ちに自社または他社の誤りを意味しません。同じ用途の洗浄剤や接着剤でも、溶剤比率、引火点、初留点、毒性、腐食性、環境有害性、物理状態が異なれば、輸送分類が変わり得ます。濃度範囲や製造ばらつき、安定化剤、内蔵物など、商品カタログでは見えない差もあります。そのため、名称や外観だけで「実質的に同じ製品」と決めないことが大切です。

また、競合品のSDSに書かれたUN番号を、そのまま正解として扱うこともできません。SDSは重要な情報源ですが、航空危険物についてIATAは、正しい分類の責任は荷送人にあり、SDSの輸送分類が十分でない場合は供給者への再照会や試験機関への相談が必要だと案内しています。自社が貨物を差し出す以上、自社製品と今回の輸送条件について説明できる根拠が必要です。

分類根拠に疑義がある場合は、出荷を無期限に止めるのではなく、確認事項、担当者、期限、再開条件を決めます。「他社と同じにしない」ことと「営業案件を止める」ことは同義ではありません。正しい順序は、現行分類を暫定維持し、必要な試験や照会を行い、根拠が変わった場合だけ正式な変更管理を経て分類を更新することです。

同系統の製品でもUN番号が違う理由

UN番号は、販売市場での製品カテゴリーではなく、輸送中に顕在化する危険性を識別するために使われます。「水系塗料」「溶剤系接着剤」「洗浄液」といった呼び方が同じでも、輸送分類が同じとは限りません。例えば、引火性液体の判定では引火点だけでなく、適用する規則によって初留点や粘度、含水率、その他の条件を確認する場面があります。毒性や腐食性など複数の危険性を有する場合は、主危険性と副次危険性の整理も必要です。

もう一つの違いは、具体的品名と包括品名の選択です。危険物リストに製品を適切に表す固有または集合的な品名がある場合、そのエントリーを優先して検討します。該当する固有品名がなければ、危険性と組成に合うN.O.S.品名を検討し、規則が求める場合は技術名を補足します。単に輸送費が安い、書類が簡単、顧客が見慣れているという理由で、候補の中から好きなUN番号を選ぶことはできません。

製品の状態や荷姿も重要です。同じ成分でも、液体、固体、ペースト、エアゾールでは輸送上の危険性が異なります。機器に組み込まれているもの、機器と同梱されるもの、単体で送るものでもエントリーが分かれる場合があります。新品、返品品、廃棄物、損傷品では、通常品と同じ条件を使えないこともあります。営業資料で同系統に見えても、輸送時の姿が異なれば同じ分類にならない可能性があります。

さらに、使用している資料の版と対象製品の一致を確認します。SDSが旧配合のまま、製品名は同じでも原料が変更された、製造拠点により濃度範囲が異なる、といった問題は実務で起きます。比較対象となる他社SDSも、作成国、言語、改訂日、輸送モード、適用規則の版が一致しているとは限りません。結論だけを並べるのではなく、結論を導いた前提を比較してください。

他社品と比較するときに確認する情報

他社比較を全面的に拒否する必要はありません。他社品との相違を調べることは、自社分類の誤りや古い情報を発見する有効なきっかけになります。ただし、比較資料として使えるのは、公開カタログの品名や顧客の口頭説明だけではありません。最新版SDS、仕様書、試験成績、成分の危険有害性情報、輸送時の荷姿など、比較可能な根拠をそろえる必要があります。

比較項目確認内容注意点
製品の同一性用途、品番、物理状態、濃度範囲、製造拠点商品名が似ていても同一製品とは限らない
物性引火点、初留点、pH、粘度、密度、反応性試験方法や測定条件も確認する
有害性急性毒性、腐食性、環境有害性、副次危険性GHS分類と輸送分類を一対一変換しない
輸送情報UN番号、正式輸送品名、クラス、容器等級、技術名航空・海上・陸上の記載を区別する
資料の有効性発行者、改訂日、対象国、規則版、対象配合古い版や別配合を流用しない

他社の詳細な処方は営業秘密であり、完全な比較ができない場合があります。その場合は「他社と同じか」を断定せず、自社製品が自社の試験値と規則に照らして適切に分類されているかを確認します。比較できない情報を推測で埋めることは避けます。他社資料に疑問があっても、根拠なしに「他社が違反している」と表現しないことも重要です。

比較の結果、自社SDSの第2項、第9項、第14項、第15項に不整合が見つかることがあります。その場合は、輸送担当者が独自にUN番号を書き換えるのではなく、SDS発行部門、技術部門、必要に応じて試験機関へ照会します。既存の出荷がある場合は、影響する品番、ロット、出荷先、輸送中貨物を特定し、確認が終わるまで対象条件の新規出荷を保留します。

比較結果は、単なるメールのやり取りで終わらせず、「自社と他社の結論」「比較できた条件」「比較できない条件」「追加試験の要否」「暫定措置」を一枚にまとめます。この整理があれば、営業は顧客へ説明しやすくなり、法務や安全部門も判断しやすくなります。目的は営業を説得することではなく、会社として再現できる結論を作ることです。

営業へどう説明し、どう案件を止めずに進めるか

営業への最初の回答は、「他社に合わせられません」だけでは不十分です。まず、競合品と条件が同じなら自社分類も再検証する価値があることを認めます。そのうえで、「同じ分類にする」のではなく、「同じ分類が妥当かを根拠で確認する」と言い換えます。営業が求めているのは、多くの場合、安い運賃、短い納期、顧客仕様との一致、入札条件への適合です。目的を確認すれば、分類変更以外の解決策が見つかります。

実務で使いやすい説明は次のようになります。「競合品のUN番号は比較材料にできます。ただし、自社製品の試験値と成分が同じか確認できないため、その番号へ直接変更はできません。まず自社分類の根拠を再確認し、必要なら追加試験を行います。同時に、現行分類のまま費用や納期を改善できる包装・数量・輸送ルートを検討します」。これなら、営業の問題意識を受け止めつつ、分類の独立性を守れます。

営業は技術的な分類変更を決裁する部署ではありませんが、顧客情報を持つ重要な関係者です。顧客が求めているのがUN番号の完全一致なのか、危険物クラスの一致なのか、輸送費の上限なのか、受入倉庫の制限なのかを確認してください。「他社と同じでないと売れない」という一文を、具体的な顧客条件に分解することが第一歩です。

会議では、営業と規制担当の二者だけで応酬しないようにします。技術または製品設計、SDS発行部門、物流、品質保証を同席させ、事実、規則上の判定、事業上の制約、代替案を順に確認します。分類に疑義が残る間は、対象製品・対象条件を限定して出荷保留にし、確認済みの別製品や別ルートまで止めないよう範囲を明確にします。

分類を変えずに販売・輸送条件を改善する方法

UN番号が正しいと確認された後も、営業上の問題を解決する余地はあります。危険物分類は維持しながら、容器容量、外装、出荷単位、輸送モード、経路、運送事業者を見直します。限定数量や適用除外量などの緩和制度を利用できる場合もありますが、該当するUN番号、容器等級、内装容器の上限、総質量、表示、書類、輸送モードの条件を個別に確認しなければなりません。

「小分けにすれば必ず限定数量になる」という説明は誤りです。危険物リストには、少量危険物の上限がゼロとされるものや、特別規定により追加条件が付くものがあります。また、海上で使える緩和を航空へそのまま流用できるとは限りません。規則上可能でも、航空会社、船会社、フォワーダー、港湾施設が受託しない場合があります。計画段階で事前照会を行い、回答条件を記録してください。

製品設計そのものを見直す方法もあります。溶剤比率、濃度、噴射剤、電池容量、容器構造などを変更すれば、物性や輸送分類が変わる可能性があります。ただし、分類を軽くすることだけを目的に処方を変更すると、製品性能、品質、労働安全、環境規制、顧客認証へ影響します。技術、品質、営業、法務、安全、物流による正式な変更管理が必要です。

外部試験機関への依頼も選択肢です。対象となる危険性に応じて、引火点、初留点、腐食性、燃焼性、自己発熱性など、判定に必要な試験を特定します。「非危険物証明を取る」という依頼ではなく、適用規則のどの判定基準を確認する試験かを明確にしてください。試験結果が期待と異なっても、結果を採用できるよう、依頼前に判断手順を合意しておくことが大切です。

輸送費だけでなく、総コストで比較します。危険物運賃、検査費、包装資材、作業時間、積替え、在庫、廃棄、顧客の受入制約、不適合時の差戻しを含めます。正しい分類のまま定型包装と定期便を整備した方が、無理な分類変更より安定して安くなることがあります。営業には「一回の運賃」ではなく、「継続販売できる輸送設計」として提案すると理解を得やすくなります。

社内判断と変更管理の仕組み

分類変更を個人間の交渉にしないため、社内に決裁手順を設けます。営業が変更要望を起票し、技術が製品同一性と物性を確認し、SDS担当がGHS情報と第14項を整合させ、輸送担当が現行の航空・海上規則へ照合します。最終承認者は、職務権限規程や危険物管理規程で定めます。営業上の承認と技術的な分類承認を分けることがポイントです。

工程主な担当残す記録
要望の具体化営業顧客条件、競合情報、費用・納期上の問題
製品情報確認技術・品質組成、濃度、物性、試験法、変更履歴
分類再評価SDS・危険物担当規則名、版、該当箇所、候補と採否理由
輸送成立性確認貿易管理・物流包装、数量、表示、書類、受託回答
承認と展開権限者適用開始日、対象品番、旧在庫の扱い、教育

分類が変わった場合は、SDSだけを直して終わりにしません。製品マスター、ラベル、危険物申告書のひな形、包装仕様、倉庫区分、受注システム、フォワーダー登録情報を更新します。旧版SDSや旧ラベルが残る場所を洗い出し、切替日と旧在庫の扱いを決めます。過去出荷への影響がある場合は、対象ロットと輸送先を確認します。

分類を変更しない結論になった場合も、採用しなかった他社比較案と理由を記録します。「担当者が反対した」で終わらせず、「製品組成が比較不能」「自社試験値は現行分類を支持」「航空会社の受託条件は別対応」と具体化します。将来、処方や規則が変わったときに再評価できる記録になります。

定期的な見直し条件も定めます。原料供給元、濃度、製造方法、容器、用途、SDS、輸送モード、規則版が変わった場合は再評価の対象です。競合情報の入手も再評価のきっかけにできますが、それだけで分類を書き換えません。正しい情報を早く更新する仕組みが、営業スピードと安全の両方を支えます。

まとめ:売れる分類ではなく、説明できる分類を使う

営業から「他社と同じUN番号にしてほしい」と言われたとき、必要なのは強く拒否することでも、要望どおり書き換えることでもありません。競合品の情報を比較材料として受け取り、自社製品の組成、物性、試験、状態、荷姿を現行規則へ照合します。他社と結論が違う場合は、違いを生む前提を説明します。

UN番号は、販売条件を有利にするために選択するものではありません。一方、正しい分類を維持したまま、容器や数量を見直し、利用可能な緩和、輸送モード、事業者、製品設計を検討することはできます。営業の目的を「番号合わせ」から「販売を成立させる条件作り」へ置き換えることが、実務担当者の重要な役割です。

目指すべきなのは、「競合と同じ分類」ではなく、「顧客、運送事業者、当局、社内監査へ一貫して説明できる分類」です。根拠が揃っていれば、営業も顧客へ自信を持って説明できます。安全と販売は対立するものではありません。正確な分類を土台に、継続して売り続けられる輸送方法をチームで設計してください。

参照・参考情報

マンガで学ぶ危険物輸送と危険品、貿易の基礎知識

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