第34話:化粧品は危険物になる?種類別のUN番号候補と旅客機の機内持ち込み・預け入れを解説
化粧品は、製品名や「肌に使う物」という用途だけでは、航空輸送上の危険物かどうかを判断できません。香水、ヘアスプレー、制汗スプレー、マニキュア、除光液、アルコールを含む化粧水や消毒用製品などは、処方、引火点、噴射剤、容器構造、容量によって、引火性液体やエアゾール等に分類される可能性があります。一方、固形石けん、粉体ファンデーション、一般的な固形口紅などは、通常はUN番号を持たないことが多いものの、個別製品の組成や付属品まで確認する必要があります。
さらに、「航空貨物として出荷する場合」と「旅客が自分で使う化粧品を手荷物として持つ場合」では適用の仕方が異なります。危険物に該当する製品でも、旅客・乗員の化粧品類に対する例外条件を満たせば、機内持ち込みまたは預け手荷物として認められる場合があります。ただし、国際線の客室内では、危険物規則とは別に液体物保安検査の容量制限も受けます。本記事では、この二重構造を中心に、種類別の具体例と確認方法を整理します。
目次
化粧品という名称だけでは危険物判定できない
航空危険物の分類は、販売上のカテゴリーではなく、製品が持つ物理的・化学的危険性と輸送形態を基に行います。同じ「香水」でもアルコール濃度や引火点が異なり、同じ「ヘアスプレー」でも、液体をポンプで噴霧する製品と、可燃性または不燃性のガスを封入したエアゾール缶では分類の考え方が違います。「化粧品」「オーガニック」「水性」「ノンアルコール」という表示だけで、危険物非該当と決めることはできません。
確認の入口は、最新版SDSの第2項、第3項、第9項、第14項です。第2項では危険有害性、第3項では組成、第9項では引火点などの物性、第14項ではUN番号、正式輸送品名、危険物クラス、容器等級、輸送モード別情報を確認します。ただし、市販化粧品では消費者向け製品にSDSが添付されていないこともあります。その場合は、製造者へ航空輸送上の分類、引火点、エアゾールの区分、適用するUN番号、旅客手荷物としての扱いを照会します。
UN番号の候補を考える場合も、商品名から即断しません。引火性の香料製品ならUN1266、エアゾール容器ならUN1950が代表例ですが、実際には組成、危険性、容器、正式輸送品名の定義により別の番号または非該当となることがあります。マニキュアや除光液も、製品処方によってUN1263、UN1090、UN1993などが候補になり得ますが、ブランドや品目名だけで番号を選ぶのは危険です。
- 商品カテゴリーではなく、組成・物性・容器構造で確認する
- エアゾール缶とポンプ式スプレーを区別する
- 「水性」「ノンアルコール」を非危険物の保証と考えない
- UN番号候補はSDS、試験情報、製造者回答で確定する
- 航空会社・国・空港の追加条件も確認する
化粧品の種類別に見るUN番号候補
次の表は、化粧品やトイレタリー製品で検討される代表的な分類例です。「可能性があるUN番号」であり、個別製品の確定番号ではありません。製品によっては危険物輸送規則上の基準を満たさず、UN番号なしとなる場合があります。また、化粧品として肌へ使えることと、航空危険物へ該当しないことは同義ではありません。
| 製品例 | 危険物となる主な要因 | 考えられる分類・UN番号の例 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 香水・オーデコロン | 可燃性溶剤、アルコール、低い引火点 | UN1266 香料製品類(引火性のもの)、Class 3の可能性 | アルコール濃度、引火点、容器容量 |
| ヘアスプレー・制汗スプレー・スプレー式日焼け止め | 加圧容器、可燃性または不燃性ガス | UN1950 AEROSOLS、Class 2.1または2.2等の可能性 | エアゾールかポンプ式か、噴射剤、引火性、キャップ |
| マニキュア・ネイルカラー | 可燃性溶剤 | UN1263 PAINT又はPAINT RELATED MATERIAL、UN1993等の可能性 | 処方、引火点、正式輸送品名の適合性 |
| 除光液 | アセトン、酢酸エチル、アルコール等 | UN1090 ACETONE、UN1173 ETHYL ACETATE、UN1993等の可能性 | 主成分、濃度、混合物としての分類 |
| アルコール系化粧水・ミスト・消毒用製品 | エタノール等による引火性 | UN1170 ETHANOL SOLUTION、UN1987 ALCOHOLS, N.O.S.等の可能性 | アルコール種類、濃度、引火点、用途 |
| 固形石けん・粉体化粧品・固形口紅 | 通常は対象となる輸送危険性が少ない | 多くはUN番号なし。ただし個別確認 | 可燃性固体、自己発熱性、付属電池等がないか |
| 化粧用機器 | リチウム電池、発熱部、ガスカートリッジ | 電池内蔵機器に関するUN番号等の可能性 | 電池種類、Wh定格、予備電池、誤作動防止 |
特に注意したいのは、容器外観が似ていても分類が異なる点です。霧吹き型の化粧水は加圧ガスを持たない場合がありますが、エアゾール缶は容器内に圧力を保持しています。ネイル製品でも、溶剤を多く含む液体、ジェル、硬化剤、接着剤では組成が異なります。セット商品では、化粧品本体に加えて、接着剤、リムーバー、予備電池、加熱器具などが含まれ、セット全体の確認が必要になることもあります。
したがって、表のUN番号を商品マスターへ一律登録するのではなく、「危険物確認要」とするスクリーニングに使うのが適切です。最終的には製造者のSDSや分類書、試験情報、現物ラベル、容器容量、出荷数量、輸送モードを照合します。
旅客の化粧品には手荷物例外がある
航空危険物は原則として旅客の機内持ち込み・預け手荷物に入れられませんが、一定の危険物には旅客・乗員向けの例外があります。IATAは、危険物の一部について、指定された要件を満たせば旅客・乗員の手荷物として運べると案内しています。国土交通省も、危険物の中に一定の制限の下で機内持ち込みまたは預け手荷物として運べるものがあると説明しています。
化粧品類では、香水、ヘアスプレー、制汗スプレー、マニキュア、除光液などが、個人使用の医薬品・化粧品類に関する例外の対象となる場合があります。代表的な数量条件は、1容器当たり0.5Lまたは0.5kg以下で、1人当たりの合計が2Lまたは2kg以下です。エアゾールは、キャップなどにより噴射ボタンを保護し、偶発的な噴射を防ぐ必要があります。これは個人使用の化粧品等に対する例外であり、商品在庫や販売用サンプルを大量に運ぶための簡易な貨物制度ではありません。
ここで重要なのは、旅客手荷物例外が適用されても、製品の危険性そのものが消えるわけではないことです。たとえば引火性の香水やエアゾールは、航空貨物として送る場合には危険物として正式な分類、包装、表示、書類が必要となる可能性があります。一方、旅客が旅行中に自分で使う合理的な量で条件を満たす場合には、手荷物例外により運べる場合があります。
- 個人使用の医薬品・化粧品類に該当するか確認する
- 1容器当たりの容量または質量を確認する
- 1人当たりの合計量を確認する
- エアゾールの噴射口をキャップ等で保護する
- 航空会社の追加制限と事前承認要否を確認する
機内持ち込みと預け手荷物で何が変わるか
旅客手荷物では、まず危険物として許されるかを確認し、その後に、機内持ち込みと預け手荷物のどちらに入れられるかを確認します。さらに国際線の機内持ち込みでは、保安検査上の液体物制限が追加されます。このため、「危険物規則では持ち込み可能」でも、「100mLを超える容器なので国際線の保安検査を通過できない」ということがあります。
日本発の国際線では、液体、エアゾール、ジェル等は、原則として100mL以下の個々の容器に入れ、容量1L以下の透明で再封可能な袋にまとめる扱いが基本です。容器が150mLで中身が20mLしか残っていない場合、容器容量が基準を超えるため、客室への持ち込みで問題になります。香水、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、歯磨き、マスカラなどは、保安検査上の液体物として扱われる可能性があります。
預け手荷物では、国際線客室内の100mLルールは通常そのまま適用されませんが、危険物の数量条件は残ります。化粧品類の例外に該当する場合でも、1容器0.5Lまたは0.5kg以下、合計2Lまたは2kg以下等の条件を確認します。容器の破損、漏れ、偶発噴射を防ぐため、確実に蓋を閉め、エアゾールの噴射口を保護し、袋や緩衝材を使うことが実務上重要です。
| 確認項目 | 機内持ち込み | 預け手荷物 |
|---|---|---|
| 危険物規則 | 旅客手荷物例外の対象・数量・条件を確認 | 旅客手荷物例外の対象・数量・条件を確認 |
| 国際線の液体物保安検査 | 原則100mL以下の容器、1L以下の透明袋等を確認 | 客室内の100mLルールとは別。ただし危険物数量条件は残る |
| エアゾール | 容量条件に加え、噴射防止と液体物制限を確認 | 容量条件、合計量、噴射防止を確認 |
| 最終確認 | 利用航空会社、出発国、乗継国、到着国、空港保安検査の条件を確認 | |
国内線、国際線、乗継便、航空会社によって細部が異なる場合があります。空港保安上の禁止品と危険物規則は重なる部分がありますが、目的の異なるルールです。「預けられないので機内へ」「機内へ入らないので預ける」と単純に振り替えず、両方の可否を個別に確認してください。
商品・サンプル・業務用品は個人用と分ける
営業担当者が展示会用の小瓶、評価用化粧品、顧客配布用サンプルをスーツケースへ入れる場合、外観上は旅行用化粧品と同じでも、個人使用のトイレタリー用品とは目的と数量が異なります。旅客手荷物例外は、業務貨物を申告せず運ぶための制度ではありません。販売用、配布用、試験用などの物品は、会社の輸送手順、税関申告、航空会社の条件も含めて正規の貨物輸送を検討します。
航空貨物として出荷する場合は、製品ごとにSDS第14項を確認し、UN番号、正式輸送品名、クラス、容器等級、包装指示、旅客機搭載可否、1包装当たり数量、表示・ラベル、危険物申告書、運送人差異を確認します。引火性の香料製品がUN1266、エアゾールがUN1950に該当する場合、旅客が1本持つ場合の手荷物例外と、段ボール箱で多数出荷する場合の貨物条件は同じではありません。
また、化粧品セットや販促キットでは、製品ごとの分類だけでは不十分な場合があります。セット内に、エアゾール、アルコール液、ネイル接着剤、除光液、リチウム電池内蔵ミラーなどが混在すれば、それぞれの危険物分類と同梱条件を確認します。外箱へ「COSMETICS」「SAMPLES」とだけ記載しても、運送人は中身の危険性を判断できません。具体的品名、数量、容器、分類根拠を明確にします。
- 個人使用品と販売・配布・評価用サンプルを分ける
- ハンドキャリーを航空貨物の代替手段にしない
- セット商品は構成品ごとに危険物該当性を確認する
- 具体的品名、数量、容器形態を運送人へ伝える
- 製造者、危険物担当、フォワーダー、航空会社へ事前照会する
化粧品の確認を迷わない実務フロー
化粧品の航空輸送を確認するときは、最初に輸送目的を分けます。旅客本人が旅行中に使う物か、会社のサンプル・商品・試験品かを確認します。次に製品を特定し、製造者、製品名、品番、処方または主要成分、容器容量、エアゾール・ポンプ・チューブ等の容器形態、数量をそろえます。名称が同じでも、処方改訂や容器変更によって分類が変わる可能性があります。
貨物の場合はSDS第14項を中心に確認し、旅客手荷物の場合は国土交通省、IATA、利用航空会社の手荷物規定を確認します。国際線の機内持ち込みでは、液体物保安検査の条件も重ねて確認します。確認結果は「危険物・非危険物」だけでなく、「貨物としての分類」「手荷物例外の適用可否」「機内持ち込み可否」「預け入れ可否」「容量・合計量」「追加条件」に分けて記録すると、誤解を減らせます。
| 段階 | 確認内容 |
|---|---|
| 1. 目的確認 | 個人使用の手荷物か、商品・サンプル等の業務貨物か |
| 2. 製品特定 | 製造者、製品名、品番、処方、容器、容量、数量 |
| 3. 危険性確認 | 引火点、アルコール、噴射剤、圧力、電池等 |
| 4. 分類確認 | SDS第14項、UN番号、正式輸送品名、クラス、容器等級 |
| 5. 手荷物確認 | 例外対象、1容器量、合計量、機内・預け、噴射防止 |
| 6. 保安検査確認 | 国際線客室内の液体・エアゾール・ジェル制限 |
| 7. 最終照会 | 航空会社、フォワーダー、空港、渡航先・乗継地の条件 |
結論として、化粧品は「身につける物だから安全」「100mL以下なら危険物ではない」と判断できません。100mLは主に国際線客室内への液体物持ち込みで使われる基準であり、危険物分類の基準そのものではありません。製品の危険性、旅客手荷物例外、保安検査という三つの層を分けて確認し、最後に利用航空会社へ照会することが、安全で確実な判断につながります。
参照・参考
- 国土交通省「機内持込・お預け手荷物における危険物について」
- 国土交通省「航空機への危険物の持込みについて」
- IATA「Dangerous Goods Guidance for Passengers」
- IATA「DGR Table 2.3.A Provisions for Dangerous Goods Carried by Passengers or Crew」
- FAA「PackSafe - Medicinal & Toiletry Articles」
- FAA「PackSafe for Passengers」
- TSA「Liquids, Aerosols, and Gels Rule」
- eCFR「49 CFR 175.10 Exceptions for passengers, crewmembers, and air operators」
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