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第101話:N.O.S.国連番号の分類方法|UN1760・UN1993、主危険性・副次危険性・優先順位を実務解説

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N.O.S.は「Not Otherwise Specified」の略で、日本語では「他に品名が明示されていないもの」などと表現されます。物質名が危険物リストに見当たらないとき、感覚的にUN1760やUN1993へ振り分けるための便利箱ではありません。試験値と組成からすべての輸送危険性を評価し、危険性の優先順位を決めた後、その結果を最も正確に表す品名として選ぶ区分です。

結論を先に示します。UN1993は引火性液体の危険性が主となるN.O.S.品名、UN1760は腐食性液体の危険性が主となるN.O.S.品名です。主危険性は、担当者が「こちらが怖そう」と選ぶものではありません。名指し品名、組成に応じた既存品名、優先危険性、容器等級、特別規定を確認して規則に従って決めます。

N.O.S.分類の意味と使用順位

N.O.S.品名は、危険物リストに物質や製品をより具体的に表す品名がない場合に使用します。「他に適合する番号がない場合か」という質問には、原則としてその理解でよいと答えられます。ただし、検索で完全一致する化学物質名がなかったというだけでは不十分です。個別物質名だけでなく、混合物・溶液として使える品名、用途や化学族を示す包括的な品名、物品専用の品名も確認します。

選定の基本順位は、具体的な個別品名を最優先し、次に物質群や用途を具体的に示す包括的品名、次に特定の化学的性質を示すN.O.S.品名、最後にクラスだけを広く表す一般的なN.O.S.品名です。つまり、より具体的で危険性を正確に伝える品名が使えるなら、広いN.O.S.番号へ逃げてはいけません。

例えば、引火性を持つ塗料が規則上の「PAINT」に該当するなら、一般的な「FLAMMABLE LIQUID, N.O.S.」より塗料の品名を優先します。また、アルコール類など化学族を指定したN.O.S.品名が適切なら、単に引火性液体とする一般N.O.S.より、具体的な品名を選びます。用途名や商品名だけで判断せず、規則上の定義と組成を照合します。

SDS第14項にN.O.S.番号が書かれていても、その記載を無条件で採用しないでください。SDSの作成日、適用輸送モード、製品の実組成、引火点、初留点、腐食性試験、毒性値、酸化性などの根拠を確認します。特に処方変更、濃度変更、原料変更、返品品や廃棄物では、既存SDSの分類をそのまま使えないことがあります。

UN1760とUN1993の違い

UN1993は「FLAMMABLE LIQUID, N.O.S.」で、主危険性がクラス3の引火性液体となるものに使います。UN1760は「CORROSIVE LIQUID, N.O.S.」で、主危険性がクラス8の腐食性物質となる液体に使います。双方の性質を持つ液体でも、単純に引火点が低ければUN1993、pHが極端ならUN1760と決めることはできません。

最初に、各危険性について独立して分類基準を満たすかを評価します。引火性については引火点や初留点など、腐食性については皮膚腐食性や金属腐食性など、毒性については経口・経皮・吸入毒性などを確認します。その後、各危険性の容器等級を求め、危険性優先順位表と規則上の先行規定を使って主危険性を決めます。

比較項目UN1993UN1760
正式輸送品名FLAMMABLE LIQUID, N.O.S.CORROSIVE LIQUID, N.O.S.
主危険性クラス3クラス8
想定される副次危険性試験結果と該当品名に応じて腐食性、毒性など試験結果と該当品名に応じて引火性、毒性など
選定の決め手優先順位判定後にクラス3が主となる優先順位判定後にクラス8が主となる
典型的な誤り溶剤を含むだけで選ぶ酸・アルカリを含むだけで選ぶ

さらに重要なのは、危険性の組合せを表す、より適切な別のN.O.S.品名が存在する場合があることです。主危険性が同じでも、副次危険性を含む専用の品名が危険物リストにあるなら、単純なUN1760またはUN1993より、その品名が適切かを先に検討します。実際の判定では、使用するIMDG CodeまたはIATA DGRの最新版リストを検索してください。

複数危険性の主危険性を決める法則

複数危険性を持つ物質、混合物または溶液では、まずそれぞれのクラスについて該当性と容器等級を別々に判定します。そのうえで、規則が特に優先すると定めた危険性を確認し、残る組合せを危険性優先順位表へ当てはめます。クラス番号が小さい方を主にするルールではありません。国連モデル規則も、クラス番号の順序は危険度の順序ではないと明記しています。

優先順位表は、縦軸と横軸へ二つの危険性と容器等級を当てはめ、交点に示されたクラスを主危険性とします。残った危険性は副次危険性です。容器等級は、主危険性だけを見て決めるのではなく、各危険性から得られた容器等級のうち、原則として最も厳しいものを採用します。このため、主危険性はクラス3でも、腐食性の評価によって全体の容器等級が厳しくなることがあります。

ただし、すべてを一枚の優先順位表だけで処理するわけではありません。爆発物、ガス、自己反応性物質、有機過酸化物、感染性物質、放射性物質などには、それぞれ固有の分類規定があります。これらの可能性があるときは、クラス3・6.1・8などの一般的な表へ直ちに入れず、該当章にある先行規定を確認します。

海上輸送と航空輸送は国連モデル規則を基礎にしていますが、採用版、用語、特別規定、輸送禁止や数量制限は完全に同じではありません。2026年の海上輸送ではIMDG Code 2024 Edition、Amendment 42-24が強制適用されています。航空輸送ではIATA DGR第67版が2026年版です。分類根拠を作る際は、実際の輸送モードと適用版を明記してください。

YES・NOで進める国連番号分類フロー

国連番号の判定には、全製品へ自動的に正解を返す公式の万能フローチャートはありません。物質ごとに必要な試験とデータが異なるためです。ただし、国連モデル規則の品名選択順位と多重危険性の優先順位を、社内用のYES・NOフローへ落とし込むことは可能です。実務では次の順番を標準にすると、N.O.S.への早すぎる飛びつきを防げます。

順番YESの場合NOの場合
1. 輸送時の現物、組成、濃度、状態は確定しているか危険性評価へ進む判定を止め、技術資料を入手する
2. いずれかの危険物分類基準を満たすか全該当危険性を列挙する非危険物判定の根拠を記録する
3. 物質・混合物を名指しする個別品名があるかその品名の適用条件を確認する包括的・N.O.S.品名を検索する
4. 用途・化学族・物品を表す、より具体的な品名があるかより具体的な品名を優先する一般N.O.S.候補へ進む
5. 複数の危険性を持つか各危険性の容器等級と優先順位を判定する単一危険性に最適な品名を選ぶ
6. 優先判定でクラス3が主かUN1993等の最適なクラス3品名を検索する次の主危険性を確認する
7. 優先判定でクラス8が主かUN1760等の最適なクラス8品名を検索する他クラスの最適な品名を検索する
8. 品名が全危険性を適切に表すか技術名、包装、表示、書類条件を確定する別の包括的・N.O.S.品名を再検索する

このフローで重要なのは、最初に国連番号を選ばないことです。最初に現物を確定し、試験値から危険性を抽出し、主危険性と副次危険性を決め、最後に最も適切な品名と国連番号を選びます。「SDSにUN1993とあるため引火性が主」と逆算すると、分類根拠が入れ替わってしまいます。

また、分類結果が海上と航空で同じ国連番号になっても、包装基準、数量制限、書類、運航者差異は別に確認します。分類フローと出荷可否フローを一枚に詰め込まず、分類確定後に輸送モード別の出荷判定を行う二段構えにしてください。

副次危険性が複数ある場合の考え方

三つ以上の危険性を持つ場合も、すべての危険性を最初に列挙します。航空分野の実務解説では、二つずつ比較して主危険性、第1副次危険性、第2副次危険性を整理する考え方が示されています。ただし、単純な勝ち抜き表を独自に作るのではなく、適用する規則本文の多重危険性規定と品名欄に従います。

例えば、液体が引火性、腐食性、毒性の三つを持つ可能性があるなら、引火点・初留点、皮膚腐食性・金属腐食性、経口・経皮・吸入毒性を別々に評価します。次に、各危険性の容器等級を決めます。その後、特別に優先される危険性がないか確認し、優先順位表で主危険性を決定します。残る危険性は、採用する品名と規則が副次危険性として認める組合せに反映します。

副次危険性があるからといって、ラベルを担当者判断で追加すればよいわけではありません。危険物リストで、その国連番号にどの副次危険性が設定されるか、特別規定による追加や免除がないかを確認します。名指し品名に想定外の危険性が試験で判明した場合は、勝手に既存品名へラベルだけ追加せず、所管当局または専門家へ確認すべき案件です。

実務上のコツは、主危険性を一つ選ぶ前に「危険性マトリクス」を作ることです。横にクラス、判定基準、試験値、該当・非該当、容器等級、根拠資料、確認者を並べます。副次危険性の見落としは、最初から一つの候補番号へ寄せてデータを集めることで発生します。全候補を並列評価してから絞り込む方が確実です。

分類例規や参考事例はあるか

公式な分類の根拠として最優先するのは、国連モデル規則、IMDG Code、ICAO技術指針、国内法令および航空実務で使うIATA DGRです。国連モデル規則には、品名選択の考え方、混合物・溶液、多重危険性、優先順位表、各クラスの判定基準、危険物リストが収録されています。これは「分類例集」というより、正解を導く規則本体です。

試験方法については、国連の「Manual of Tests and Criteria」が公式資料です。自己反応性、自然発火性、酸化性、腐食性など、分類に試験が必要な場合の方法を確認できます。化学物質の物性値やGHS分類の参考には、NITEの化学物質総合情報提供システムやGHS分類結果が役立ちます。ただし、GHS分類と輸送分類は目的と基準が異なるため、GHS区分をそのまま輸送クラスへ置き換えてはいけません。

国や地域によっては、所管当局の分類承認、既存判断、49 CFRなどに具体的な優先順位規定があります。これらは考え方を理解する参考になりますが、日本発の海上・航空輸送にそのまま代用できるとは限りません。また同業他社のSDSは参考資料であって、自社製品の分類証明ではありません。濃度や不純物、添加剤が違えば分類結果も変わります。

分類で迷ったときに探すべきものは「似た商品名のSDS」ではなく、同じ組成と濃度、同じ物性、同じ輸送状態に対する信頼できるデータです。十分なデータがなければ、必要な試験を実施するか、製造者、認定試験機関、危険物専門家、関係当局へ照会します。納期都合で広いN.O.S.番号を仮置きし、そのまま出荷する運用は避けてください。

実務で迷わないための判定記録

分類判定は、SDS第14項の転記作業ではありません。この会社のように複数部門が関わる場合は、技術部門が組成と物性、環境・安全部門が危険性評価、物流・貿易部門が輸送モード別規則と出荷条件を確認する役割分担が現実的です。最終責任者を明確にし、判断途中の候補番号を出荷マスターへ登録しない仕組みが必要です。

判定記録には、製品名、品番、処方版、組成、濃度、物理的状態、試験値、該当する全危険性、各容器等級、優先順位判定、候補にした品名、採用しなかった品名と理由、技術名、適用規則と版、判定日、判定者、承認者を残します。UN1760とUN1993で迷った場合は、引火性と腐食性の両方の判定表を添付し、どの規則条項と交点で主危険性が決まったかを記録します。

N.O.S.品名では、規則に従って括弧内へ技術名を追記することが重要です。商品名や社内コードではなく、危険性へ最も寄与する成分の一般に認識された化学名を使用します。複数成分が危険性へ寄与する場合の記載数や選び方は、適用規則の正式輸送品名に関する規定と特別規定を確認します。

実務上の結論:N.O.S.は「ほかに適切な具体的品名がない」と確認した後に使います。UN1760とUN1993の選択は、腐食性か引火性のどちらを担当者が重視するかではなく、各危険性の試験結果、容器等級、先行規定、危険性優先順位表によって決めます。迷った場合は、候補番号を仮登録せず、必要データを埋めてから専門家または所管当局へ照会するのが正しい進め方です。

参照・参考

マンガで学ぶ危険物輸送と危険品、貿易の基礎知識

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